Here We Go!

ねえ、レコードってどうやって音が出るの?

実は、あの溝の中に音の形がそのまま刻まれてるんだよ
普段はマトリックス番号やプレス違いばかり気にしていますが、今回はいったん基本に戻って、「そもそもレコードってどうやって音が出ているの?」を、小学生にもわかるように整理してみようと思います。
そして後半では、そこから一歩進んで「なぜコレクターは若いマトリックス(いわゆる“マト1”)を追い求めるのか」まで、製造プロセスに沿って解説していきます。
レコードの仕組みを一言でいうと、
「音を溝の動きに変えて保存して、針でその溝をなぞって、もう一度音に戻している」
これだけです。
では、レコードができて、音が出るまでを順番に見ていきましょう。
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そもそも「音」ってなに?
「こんにちは!」と声を出すと、空気がブルブル震えます。
その震えが空気を伝わって耳に届く。これが音の正体です。
音 = 空気の振動
スピーカーから音楽が出ているときも同じ。スピーカーの丸い部分(コーン)が前後にすばやく動いて、空気を振動させています。
つまり、音楽をレコードに記録するということは、この「振動」を何らかの形で保存するということなんです。
STEP1 まず音楽を演奏する

バンドが演奏します。ギター、ベース、ドラム、ボーカル……。
それぞれが空気を振動させて音を作ります。
たとえばドラムを「ドン!」と叩く。
すると、ドラムの振動が空気に伝わって、「ドン!ブルブルブル……」と空気が震えます。
このままだと、ただの空気の振動。
ここからレコードに記録できる形に変えていきます。
STEP2 マイクが振動を電気信号に変える

ここで登場するのがマイク。
マイクの中には、音の振動を受け取るための小さな膜があります。
音が来ると、この膜が音に合わせてブルブル動きます。
マイクは、この膜の動きを電気信号に変えます。つまり、
ドラムの「ドン!」 → 電気信号の「ドン!」
となるわけです。この電気信号を使って、今度はレコードの溝を作ります。
STEP3 電気信号を「溝」に変える

ここからがレコード作りのすごいところ。
音楽の電気信号を、カッティングマシンという機械に送ります。
カッティングマシンには、先端に小さな刃がついたカッティングヘッドがあります。
この刃が、音楽の電気信号に合わせて動きながら、円盤に溝を刻んでいきます。
- 大きい音 → 溝のふれはば(振れ幅)が大きい/小さい音 → 振れ幅が小さい
- 低い音 → 溝の動きがゆったり/高い音 → 溝の動きが細かい
円盤を回しながら、外側から内側へ少しずつ進むので、溝はぐるぐるの長い1本の道になります。
この長い溝の中に、音楽の情報が記録されているわけです。
このとき溝が刻まれた盤をラッカー盤と呼びます。
ここではわかりやすさを優先して「原盤」と呼んでいますが、正確にはこのあとメタルマスター・マザー・スタンパーという工程を経ていく、一番最初の段階の盤です。
そのカッティングで最初に作られる、とても大切な盤ですね。
💡 豆知識:カッティング時のイコライジング(RIAAカーブ)
実は、マイクからの電気信号をそのまま溝に彫っているわけではありません。
そのまま彫ると、低音は大きな振幅になって溝のスペースを大きく使い、高音は細かな振動になるため、そのまま記録するとレコードに効率よく収めるのが難しくなります。
そこで「カッティング時に低音を小さく・高音を大きくして溝を彫り、再生時にプレーヤー側で逆の処理をして元の音に戻す」という世界共通の規格(RIAAカーブ)が使われています。
STEP4 原盤から「金属のハンコ」を作る

ラッカー盤は柔らかく傷つきやすいため、これをそのまま使って何千枚ものレコードを作るわけにはいきません。
そこで登場するのが、メッキ → メタルマスター → マザー → スタンパーという工程です。
ラッカー盤の表面に金属を電着させると、溝の形が金属にコピーされます。
ラッカー盤の「へこんだ溝」に対して、金属側には「出っ張った形」ができる—粘土に★を彫って、そこからハンコを作るイメージです。
ラッカー盤を「親」だとすると、そこから型を取ったメタルマスターが「子」、その子からまた型を取ったマザーが「孫」、そのまた型を取ったスタンパーが「ひ孫」——というふうに、世代を重ねてコピーしていきます。
最後のひ孫にあたるスタンパーが、レコードを大量生産するための「金属製のハンコ」になります。
STEP5 プレスしてレコード完成!

レコードの材料には、主にPVC(ポリ塩化ビニル)というプラスチックが使われます。
これを熱して柔らかくし、上下のスタンパーで挟んでギューーーーーッとプレス。
スタンパーの細かい凸凹が、柔らかいPVCにコピーされます。
そのあと冷やして固め、はみ出した余分な部分を切り取れば、あの丸いレコード盤の完成です。
真ん中のラベルも、プレス工程で一緒に圧着されます。
STEP6 針が溝をなぞって、また音に戻る

レコードをプレーヤーにセットして回すと、針が溝の中を進んでいきます。
溝には細かな動きが記録されているので、針もその動きに合わせてブルブル動きます。
針の根元にはカートリッジという部品があり、針の動きを電気信号に変換します。
つまり、レコードを作ったときとは逆方向をたどっているわけです。
作るとき: 音 → マイク → 電気信号 → カッティング → 溝
聴くとき: 溝 → 針 → 電気信号 → アンプ → スピーカー → 音
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おまけ:ステレオはどうやって左と右の音を1本の溝に入れているの?

ステレオレコードの溝は、大まかに見るとV字型になっています。
左右の斜面の動きを利用して、左右それぞれの音の情報を記録している仕組みです。
詳しくは45度方向の動きを使って分けているのですが、ここは少し難しい話なので、また別の機会にしますね。
💡 豆知識:ステレオ溝の構造はもう少し複雑
ステレオ盤(45/45方式)は、左チャンネルを内側の斜面(45度)、右チャンネルを外側の斜面(45度)に記録しています。
モノラル盤は針が左右(水平)にしか動きませんが、ステレオ盤は針が左右+上下方向、つまり立体的に動きます。本文では「V字の左右の斜面を使う」とシンプルに書きましたが、正確には「上下左右の立体的な振動」を記録している、というのが実際の仕組みです。
2001年の動画ですが、カッティングからプレスまでの実際の工程を詳しく見ることができます。
実際の映像を見ると、想像以上に手間のかかる作業だとわかります。まさに職人技という感じですね。
ここからが本題:なぜコレクターは「マト1」を追い求めるのか
ここまでの製造工程がわかると、コレクターが熱狂する「マトリックス番号」の話が一気につながってきます。
そもそもマトリックス番号とは?
レコードの内周(音溝が終わったあとのツルツルした部分)をよく見ると、手描きや刻印でアルファベットや数字が彫られています。
これがマトリックス番号です。
この番号は、レコードのカッティングや製造に関する識別情報として使われるもので、末尾の数字がカッティングの世代(何回目のマスターか)を示しているケースが多いです。
ただし番号の体系はレコード会社や工場、時代によって異なるため、必ずしもすべての盤で同じルールが当てはまるとは限りません。
- A-1 / B-1(いわゆる「マト1」) : 一般的には、そのアルバムのために最初に原盤を削り出した、1回目のマスター
- A-2 / A-3 など : 何らかの理由でカッティングをやり直した、あるいは追加プレス時に新しく原盤を削り直した、2回目以降のマスター
💡 豆知識:「マト1」と「1stプレス」は厳密には別物
記事内ではわかりやすさを優先してほぼ同じ意味で扱っていますが、厳密には次のように役割が違います。
・マトリックス番号(マト1など) — カッティング(ラッカー盤の削り出し)が何回目かを示す番号
・マザー/スタンパー番号(例:1G、1Rなど) — そのラッカー盤から作られた「型」が何本目かを示す番号
そのため、同じ「マト1」でも、スタンパーの摩耗が進んだ後半(何千枚目か)にプレスされた盤より、「マト2」の作りたて(1本目のスタンパー)の盤の方が音が良い、というケースも起こり得ます。
💡マトリックス番号は肉眼でも読めなくはないですが、手書きの細かい文字や摩耗した刻印は、ルーペがあると格段に見やすくなります。(老眼には細かい字がきついですね😭)
自分もLED付きのものを愛用していて、暗い内周部分でも文字がくっきり見えるので手放せません。
倍率は好みが分かれるところですが、マトリックス番号くらいの文字サイズなら20倍前後がちょうど読みやすいと思います。
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「若いマトリックス=音が良い」と言われる2つの理由
1.オリジナル・マスターとの関係の深さ
カッティングは、スタジオで録音されたアナログのマスターテープを再生しながら行われます。
アナログテープは再生ヘッドを通るたび、また時間が経つたびに微量の磁気情報が失われていくと言われています。
若いマトが好まれる理由のひとつとして、オリジナルのマスターテープとの関係が深いことが多い、という点が挙げられます。
ただし、マト1が作られた時期と録音・ミックスの時期が必ずしも近いとは限らず、同じマスターから短期間に複数回カッティングされることもあれば、国によって別のマスター(コピーテープ)が使われることもあります。
「若いマト=マスターテープが新鮮」と単純に言い切れるわけではありません。
2.スタンパー(金属型)の摩耗
スタンパーでプレスを何百枚、何千枚と繰り返すうちに、金属型側の微細な溝のエッジが少しずつすり減っていく傾向があると言われています。
ただし実際の音質は、使用されたマスターやメタルワークの状態、プレス条件など複数の要因が絡み合って決まるため、マトリックス番号の若さだけで単純に判断できるものではありません。
ただし、「若いマト=絶対最高」とは限らない
ここまで読むと「じゃあ全部マト1を買えばいい」と思いがちですが、ここからがレコードの面白いところです。
1.マト1がまだ試行錯誤の段階だったケース
最初のカッティング(マト1)で、低音が強すぎてプレーヤーの針が飛んでしまうようなトラブルが起きた例がある、という話をよく耳にします(※自分が実際に検証した情報ではないので、あくまで伝聞として書いています)。
その後イコライジングを調整してバランスよく仕上げたマト2・マト3の方が、結果として聴きやすいと評価されるケースもあるようです。
2.本国プレスか他国プレスかの問題
たとえば海外バンドのレコードを買う場合、UK盤のマト2(本国の最高品質なオリジナル・マスターテープから再カッティングされた盤)の方が、他国盤(US盤や日本盤など)のマト1(本国から送られてきた世代の古いコピーテープから作られた盤)よりも音の鮮度が高い、という逆転現象が起こることもあります。
まとめ:1枚の盤に刻まれた歴史を聴く
コレクターが若いマトリックス盤を追い求めるのは、単に「初版」という骨董品的なプレミア価値だけが理由ではありません。
- 制作現場の空気に近い「オリジナル・マスターとの関係の深さ」
- 溝が最も鋭利に転写された「スタンパーのコンディション」
という、物理的な裏付けのある「音の違い」を体験したいから、というのが大きいと思います。
もちろん今回書いた「マト1が良い理由」も、すべてのケースに当てはまるわけではなく、実際にはカッティングの条件、使用されたマスターの違い、メタルワークやスタンパーの状態、プレス条件など、複数の要因が絡み合って音は決まります。
本国/他国プレスの関係や、エンジニアの調整判断も含めて、盤ごとに事情が異なるということです。
手元のレコードのマトリックス番号を眺めながら、「この盤はどんなストーリーを辿ってここに届いたんだろう」と想像してみると、いつもの音楽が少し違って聞こえてくるかもしれません。
byebye 👋


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